2025年8月19日から22日、東洋大学鈴木ゼミと共愛学園前橋国際大学で「スローシティを通じた地域活性化」をテーマに宮城県気仙沼市でゼミ研修を行いました。スローシティ(イタリア語でチッタスロー)運動は、1999年にイタリアの地方小都市で始まった取り組みです。大都市とは違った人間サイズのまちや地域での「ていねいな暮らし」を持続可能なものにして、そこに暮らす人が「よりよく生きる」ことが、スローシティ運動の目的です。そのためには、地域にないものではなく、あるものや失われつつあるものを活かし、まちの個性と多様性を尊重したプロジェクトを都市政策に反映させて、市長、行政、市民が協働して実践するための枠組みです。気仙沼市は、2013年に日本初のチッタスロー国際連盟から認証を得た都市です。
以下では東洋大学の鈴木ゼミが行った「チッタスローかるたプロジェクト」の調査を紹介します。

今回は鈴木ゼミ3年の4名が、フィールドワークを行い気仙沼の町を探索しました。私たちは今年の2月にも気仙沼訪れていたため、以前とは異なった目線でフィールドワークを行うために、レンタルサイクルやレンタカーを借り行動範囲を広げ活動しました。私たちは現在、気仙沼市のスローシティを日本や世界の方々に知ってもらうために、日本独自の文化である「かるた」を通して知ってもらおうと制作を進めています。スローシティには7文化72項目の認証項目があり、それを満たす必要があります。かるた制作では、その場所が2つ分野に当てはまるように作成しています。主に以下の場所を訪れ、かるた制作の素材集めの参考としました。
- 気仙沼 海の市
- シャークミュージアム
- 氷の水族館
- 気仙沼市役所
- 気仙沼大島
- 小田の浜海水浴場
- 岩井崎
- モーランド本吉
- アンカーコーヒー 内湾店
以下では一日に訪れた活動場所と制作したかるたを紹介します。
1日目 8月19日(火)

「海の市」の中は広く、一階には飲食店やお土産店、氷の水族館があり、二階にはシャークミュージアムがありました。気仙沼はサメの国内水揚げ量80%以上を占める「サメの街」として知られています。日本で唯一のサメ博物館「シャークミュージアム」では、サメの大きな模型やサメに関する歴史、豆知識など、普段知ることのできない情報に接することができました。「氷の水族館」では、壁に魚たちが展示されており、プロジェクションマッピングと合わさり幻想的でした。また、中の温度は-20度まで下がりまさに氷の世界でした。

このかるたは現在制作中のもので、シャークミュージアムを参考に制作しました。シャークミュージアムでは、上記でも述べたように気仙沼がサメの水揚げ量日本一であることやサメに関する知識などをわかりやすく学ぶことができます。これらの観点から認証項目のエネルギー環境(生物多様性の保全)と農業、観光、伝統、工芸(地域の文化イベントの保護)に当てはまると考え、作成しました。
2日目 8月20日(水)

2日目はまず市役所を訪れました。気仙沼市の菅原茂市長と男山株式会社の社長で気仙沼商工会の会頭である菅原昭彦さんからお話を伺いました。お話の中で、スローシティやスローフードは、ファストフードや都会のような生活を否定しているのでなく、それぞれの町にあったバランスが大事だということが印象に残りました。
その後レンタカーを借り、気仙沼大島を訪れました。大島は港町の雰囲気とは違い、自然が多く、とても気持ちのいい場所でした。大島の東部にある小田の浜海水浴場では、2023年から3年連続で「国際環境認証ブルーフラッグ」を獲得しています。海の透明度が高く、砂浜にゴミもなくとてもきれいな場所で家族連れなどで賑わっていました。

このかるたは気仙沼大島の小田の浜海水浴場を参考に作成しました。上記でも記したように小田の浜海水浴は海が透き通っており、子供から大人まで楽しめる場海水浴となっています。これらの観点から認証項目のインフラ(子供連れ家族や妊婦に対する政策)とエネルギー環境(水質保全)に当てはまると考え作成しました。
気仙沼大島を出た後、私たちは三陸復興国立公園内にある岩井崎に訪れました。岩井崎には、長い年月をかけて海水によって削られた、岩の割れ目から潮が吹き上がる潮吹岩がありあす。また復興のシンボルである龍の松が立っています。ゆっくりと沈む夕日と共にこうした景色を目に収めることが出来て、自然の壮大さを感じることが出来ました。
3日目はレンタカーで様々な動物と無料で触れ合えるモーランド本吉に行きました。うさぎや馬、ヤギにエサをあげて癒されたり、牧場を一望できる、全長123mのローラー滑り台で遊びました。全身で自然を感じながら、お昼ご飯はBBQを楽しみました。牧場ならではの牛乳や濃厚なソフトクリームが楽しめることに加えて、ポニー乗馬、アイスの手作り体験教室、不定期のフリーマーケットなど、子どもたちも楽しめる施設になっています。家族連れの方も訪れていて、無料でたくさん楽しめるため子育て世帯の支援になっていると感じました。

3日目 8月21日(木)

このかるたはモーランド本吉での体験を元に作成しました。牧場では馬、羊、ヤギ、ウサギなど様々な動物たちと触れ合うことができ、ポニー乗馬や手作り体験教室が開催されているため、子どもが楽しく遊べる施設です。これらの観点から認証項目、エネルギー環境(生物多様性の保全)とインフラ(子供連れ家族や妊婦に対する対策)が当てはまると考えました。
17時から気仙沼スタディツアー中間発表会に参加し、スローシティ気仙沼かるたの制作背景や目的、制作の手順、実際のかるたの例を発表しました。「かるたは通常、子ども向けの商品であるがスローシティ気仙沼かるたを大人の年齢層にも手を取って貰えるような商品にするためには、幅広い年齢層に興味が湧くような工夫を凝らす必要がある。」という貴重なご意見をいただきました。またスローシティを知ってもらうためのツールとしてなぜかるたを選んだのか、スローシティを広める意義などを質問いただき、普段制作している中では気に留めていない部分も深く考えるきっかけになりました。気仙沼市役所の方や一般市民の方の期待に応えられるようなかるたを制作して、納品したいと強く感じました。

4日目 8月22日(金)
朝に前回2月の気仙沼研修でも訪れたアンカーコーヒー内湾店に行きました。大島産のゆずを使用したゆずネードとドーナツを頂きました。朝から地域の人で賑わっており、港が一望できる眺めの良いカフェでゆったり時間を過ごして、旅の疲れを取ることが出来ました。
今回、気仙沼の様々な場所に訪れて前回の2月の気仙沼スタディツアーでは知ることが出来なかった気仙沼の魅力を知れました。スローシティ気仙沼のこの魅力を多くの人に伝えるために、かるた制作活動を進めていこうと思います。
東洋大学 国際学部 国際地域学科 3年 宇佐美 樹里、藤原 大聖